アスベスト 石綿 中皮腫 胸膜肥厚斑 胸膜プラークとは

アスベスト(石綿)が心配ですが……

 昨今,アスベストによる中皮腫や肺癌が問題になっています。アスベストの輸入量は1955年より急増し,1977年には最高となり,1990年以後急速に減少し,2004年に全面的に原則使用禁止になっています。
 多量の暴露をうける職業性暴露では,暴露後10年から30年後に肺野全体が線維化する石綿肺となり,続いて肺癌が発生します。この肺癌の発生率は,通常の5.2倍の頻度となります。一見多いようですが,喫煙による肺癌の発生頻度である10.8倍よりは少ない倍率です。喫煙とアスベスト吸入が重なると53.2倍となります。アスベストよりタバコの方がはるかに慢性的暴露による害が大きいのです。
 胸膜肥厚斑と中皮腫は非職業性暴露(環境暴露)でも発生します。胸膜肥厚斑は,胸膜プラークとも言われ,暴露後20年以降にみられ,横隔胸膜や背側胸壁面に好発します。良性ですが石綿暴露の間接的な証拠となります。中皮腫は石綿による悪性腫瘍で暴露後25年以降平均40年後に発生します。胸膜,腹膜,心膜,精巣鞘膜に発生し診断も治療も難しい予後の悪い悪性腫瘍です。2002年の日本の中皮腫による年間死亡は約800人,石綿170トンに1名の中皮腫が発生すると推定され,石綿輸入量からみて2010年から30年間は中皮腫の発生が更に多くなり年間約1700人と予測されています。

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