甲状腺機能亢進症 バセドウ病とは 診断と治療

 甲状腺は,首ののど仏のあたりにある,ホルモンを出す臓器です。甲状腺ホルモンは,活気を与えるホルモンといってもよく,分泌が減少すると,活動力の低下・脱毛・浮腫がみられ,老人ですと時に認知力の低下もみられます。この状態を甲状腺機能低下症と言います。下肢のむくみが代表的な症状ですので、粘液水腫と呼ばれることもあります。
 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になった状態で、バセドウ病とも言われます。分泌が多すぎると,動悸・発汗・手の震えが起こり,イライラしやすくなります。新陳代謝が亢進するため、過食になるにもかかわらず、通常体重が減少します。また、眼の奥の脂肪の増加や外眼筋の肥大のため、眼球が突出してくることがあります。血液検査では、甲状腺ホルモンの値を示す数値である、free-T3(FT3)、free-T4(FT4)が上昇します。逆に甲状腺からホルモンを出すことを促す下垂体のホルモンである、TSHが低下します。下垂体は、脳の下の方にぶら下がっている小さな臓器であり、体の中のホルモンの総元締めとも言えるものです。ごく軽度の甲状腺機能亢進症の場合、TSHの低下という異常値のみ示されることがあります。一般的な血液検査では、CPKやクレアチニンの低下と、ALPの上昇がみられます。ALPは、肝臓疾患で上昇することが有名ですが、甲状腺機能亢進症では、骨が吸収されることを受けて、骨の造成が盛んになるため、この酵素が上昇します。バセドウ病以外にも一時的に甲状腺ホルモン分泌が上昇する病気に、無痛性甲状腺炎があり、バセドウ病と紛らわしいこともあります。しかし、バセドウ病では、TSH受容体抗体(TSHレセプター抗体)という検査が陽性になるのに対し、無痛性甲状腺炎では陰性ですので鑑別可能です。
 甲状腺機能亢進症の治療には、メチマゾールもしくはプロピルチオウラシルという薬剤を使用します。最初多めに服用し、ホルモンの値を見ながら徐々に減量してゆきます。多くは、薬剤で治療可能ですが、甲状腺の腫れの強い方は薬剤治療だけではよくならないこともあり、その際は甲状腺を部分的に切除する手術を行うこともあります。放射線治療を行うこともありますが、後に甲状腺機能低下症を招くことが多いことが欠点です。緊急に甲状腺ホルモンの分泌を抑えたいときは、無機ヨードを服用することもありますが、効果は一時的です。ホルモンの分泌そのものを抑える働きはありませんが、動悸や手の震えをとるために、β-ブロッカーと言われる薬剤を併用することが一般的です。

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