糖尿病合併症とは 糖尿病性網膜症 光凝固 糖尿病性腎症 糖尿病性神経症 閉塞性動脈硬化症

糖尿病になると,なぜ悪いの

 では,なぜ糖尿病になると問題なのでしょう。糖尿病は,血管の病気とも言われます。糖尿病が体によくない最も大きな理由は,この血管を傷める合併症を引き起こすことにあります。血管には,大動脈のような直径数 cm もある血管から,顕微鏡で見なければわからないような毛細血管まで様々な血管があります。糖尿病は,これら全ての血管に障害を与えます。
 小さな血管を傷める合併症として,糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経症があります。糖尿病性網膜症は,最も困る合併症で,最悪の場合は,失明にも至ります。失明の最も大きな原因が糖尿病であることから,重大性がわかるでしょう。網膜というのは,カメラでいうフイルムの様な物ですが,その網膜上に新しく弱い血管が異常に発生し,出血等により,網膜の機能を低下させます。幸い網膜は眼底鏡という器械で見ることができますので,網膜症の進行状況は,正確に判断することができます。糖尿病の方は,是非定期的に眼科を受診して,網膜のチェックをして下さい。網膜症の進み具合によっては,光凝固等の処置により,進行をある程度おさえることが可能です。糖尿病性腎症もやはり困った合併症です。最初は,ごく微量の蛋白尿ではじまり,徐々に尿蛋白が増え,最終的に腎臓の機能を損ない,透析に至ります。現在,透析の原因で最も多いのが,糖尿病性腎症です。糖尿病性神経症は,神経を養う血管の通りが悪くなったり,神経細胞の中にある種の物質がたまることにより,神経の機能が障害される合併症です。神経は体の様々な機能を調整したり,痛みを伝えることにより脳に異常を知らせたりする大切な機能を担っています。この神経が障害を受けると,様々な不都合が生じることは想像できるでしょう。
 大きな血管を傷める合併症は,動脈硬化と言われます。心臓の血管を傷めると狭心症や心筋梗塞になり,脳の血管を傷めると脳梗塞となり,命に直結する病気に発展します。また,足の血管を傷めると,閉塞性動脈硬化症となり場合によっては足の切断ということにもなりかねません。
 このように,糖尿病は血管を傷めることにより,様々な合併症を引き起こします。これら合併症を予防する最も大切なことは血糖値を改善することです。HbA1c で6.5%以下にすること,可能であれば正常上限の5.8%未満にすることが理想でしょう。また,前項で少し触れた耐糖能障害という,空腹時は血糖値が正常で食後のみ異常に血糖値が上がる方でも,糖尿病同様の合併症が起こることが知られており,早めに治療を始めることが大切です。

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